1979年8月 ロンドンにやってきた 4この飛行機がロンドンまでの直行便ではなかったと知った途端、私には、ある種の開き直りが出てきた。最初の海外旅行でもあり、ロンドンまでどんな所にこの飛行機が止まるのかわからないが、急ぎの旅行ではない。 色々な国を見学することができると、かえって得をした気分になっていた。 今、思い返すとあの頃若かった私は、生まれて初めて海外に出て、何を見てもきいても面白かったのだと思う。 私の横に座った人は、少しよれよれのグレーの背広によれよれの白いシャツを着た、愛想の良い中国人のおじさんで、私も英語の勉強と思って片言ながら話をしていたのだが、何を話したのか、話が通じていたのかも思い出せない。 しかし、なぜその人を覚えているのかというと、実はそのおじさんは中国の大使で、彼と話している間にひょんなことから彼のPASSPORTを見せられ、そこにDIPLOMAT(大使)と書いてあって非常におどろいた記憶があるからである。 DIPLOMATの肩書きと、彼がPIAのエコノミー席に座っていること、そして彼が着ていたよれよれの背広はどう考えても不釣合いだった。 続く ジャンル別一覧
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